舞台は日本海に面した“綾凪市”。10年前に発生した“同時多発無気力症”による災害から復興を遂げた未来型新興都市である。高校生の神郷慎(カンザト シン/17歳)は、弟の洵(ジュン/14歳)と共に、長男で綾凪市の若き警察署長である諒(リョウ/28歳)と10年ぶりに再会する。

 その頃、綾凪市ではある怪奇事件に襲われていた。潜水艇の中から忽然と姿を消した乗組員。10年ぶりに世間を騒がせる無気力症。学生が無惨な姿となって殺されていく表裏反転死体事件。一連の事件に潜む組織を追う諒。そして事件に巻き込まれた事から、異形の姿をした“ペルソナ”を覚醒させる慎。
 兄弟達の運命の歯車が今回り始める――。

第26話「浮上する未来」
愛する家族の運命をペルソナによって翻弄され、また自らのペルソナで最愛の女性の命までも奪ってしまった諒は、人の精神をペルソナから解放することを望む。慎は、そんな兄の姿を垣間見て胸を痛め、すべての悲劇と混沌を終わらせるため、様々な想いを剣に変え携えたペルソナを発現させる――。

第25話「謂れなき喪失」
ペルソナに纏わる数々の事実と、諒が抱えていた真実――知る由もなかったことを次々と突きつけられた慎。無気力になった人々と同じように海辺で膝を抱えた慎の意識にありありと浮かぶのは、当たり前の日常としてそこにあったかも知れない家族の情景だった。その頃、稀人の地下施設にあった有機人工体が再起動し、富山湾をめざして移動を始めていた。

第24話「贖罪の楔」
十年前のその日。昨日までと変わらぬ日常が明日も続くことを誰もが信じていた冬の午後、 綾凪市沿岸部を中心に突如起こった同時多発事故、そして原因不明の地震を含む多重災害。多くの人々が一瞬にして無気力症状態へと陥り、都市機能が麻痺したその瞬間、その爆心地と呼べる場所――鉛色の富山湾を望む海岸に、小松原彩音、そして両親とともに神郷諒がいた。そのとき、彼の腕の中に抱かれていたのは――。

第23話「絆を抱いて」
自身の記憶が造られたものであり、九條によって操られていた事を知った叶鳴。失意の中、叶鳴は仲間達に別れを告げてひとり海へと向かう。だが彼女が立っていたのは、慎とのささやかな思い出が刻まれた場所だった。

第22話「依り代」
失った愛娘を蘇らせるという一念に衝き動かされていた九條。既に思想も理念もなく、 それは無意識の海の摂理を脅かす妄執と化している。稀人の潜伏する研究施設を つきとめた真田だったが、彼の最終行動は慎たちペルソナ使いに委ねられる事となった。

第21話「残刻」
洵を拉致した稀人たちは洵のペルソナを利用し、制御の限界を超えつつある複合ペルソナの安定を図ろうとする。そして慎は、かつてペルソナの研究に関与していた柊社長から、諒だけが知っていた両親の過去についての真実を知らされる。

第20話「おもいで」
富山湾を中心に起きている一連の不可解な事件と事象は、無意識の海より出でるペルソナを人が弄び続けたことに対する報いであると推測する真田。歪みそのものである稀人たちの複合ペルソナと、九條の研究へと到るまでの過去の開発データ一切の滅却を命題に、慎たちに決戦の気構えを求める。そんな折、慎と洵は二人の時間を過ごす。

第19話「帰還者」
不可解な行方不明事件は依然、富山湾とその沿岸地域において断続的に起きていた。無気力さを深める人々の中には自らも消えたいと願う者たちが現れ、海岸に呆けた姿を晒す。一方で、消えた人々の帰還も確認され始めるが、彼らは一様に肉体と精神の不一致という異変をきたしていた。日常が静かに異様さを増し始める中、榊葉拓朗は、生き別れになっていた父親を名乗る妙齢の女性と出会う。

第18話「沈む夢」
洵は、自宅のそばの公園で『くじらのはね』を読む赤い髪の少女と出会う。アヤネと名乗るその少女に、これまで他者に対して抱いたことのない思いが芽生えるのを感じ、戸惑いながらも惹かれてゆく洵。その不思議な少女が、いつも白い羽根とともに現れては消える謎めいた存在であることに気づいた慎は、胸騒ぎに突き動かされるように、二人の「逢瀬」を尾行してしまう。そこで慎が目にしたものとは……。

第17話「風の里にて」
八尾町にあるめぐみの実家で、洵に応急手当を施し夜明けを待つ慎たち。自分だけが臨んだつもりだった危険な場所に近づき、負傷してしまった洵を前にして、慎は諒が自分たちを遠ざけようとした気持ちを実感する。同じ屋根の下で、茅野めぐみは自身の10年前と向き合っていた。めぐみが人知れず己を責め続け、己のペルソナに疑念を抱き続けてきたわけも、あの日起きた同時多発無気力症による事故の惨禍の中にあったのだった。

第16話「解放の子と治癒の聖霊」
マレビトたちとの戦いを漠然と予期していたものの、拓朗とめぐみは、潜在者抽出のため彼らと同じように《影抜き》を利用した上、犠牲を防げなかった真田たちに釈然としない。また二人の胸にはそれぞれ、己のペルソナに対して抱き始めた不安と、拭えぬ不信感とがあった。諒への思いから真田への協力を決めた慎は、洵の心配をよそに、ひいらぎ製薬の永井が密かにマレビトたちへ持ちかけた制御剤取引の阻止行動に参加する。

第15話「明日を閉ざすもの」
諒の失踪と《リバース》事件の周知を受け、綾凪署へ赴任していた参事官・真田明彦が、慎のもとを訪れる。拓朗、めぐみと共に『ペルソナ使い』として戦うことを求める真田。彼と諒は、超常精神体による事案専任の特務機関員でありながら、実際には関連する事実の隠蔽のみを上層部から義務付けられていた。互いが胸に抱く「ペルソナの歪んだ研究を絶つ」という目的意識のもと、二人は密かに共闘していたのだった。

第14話「狭間の彷徨」
突然の訃報に悲しみに暮れる慎は亡き影と真相を追い求め彷徨い続ける。 そして季節は夏へと移り、街では人々の多くが次第に生気を失いつつあった……。

第13話「朱に染まる雪原」
摂理に反してペルソナを使役し続けてきた諒に、限界が迫りつつあった。洵の授業参観の日、出席を約束する諒になぜか戸惑いを覚える慎。その頃、新たなペルソナ潜在者リストを得たマレビトたちが、九條稀也の意思のもと再び綾凪市にリバース事件の惨禍をもたらそうとしていた。不穏な何かに脅かされながらも許されていた日常が、今、終わりを告げる――。

第12話「救済者」
洵の検査に付き添い病院を訪れた慎は、10年前の事故で死に瀕した洵を救ってくれた脳外科医についての話を聞く。改めて感謝の念と、その奇跡的手腕への興味を抱く慎だが、その人物はすでに世を去っているという。その日の夜、諒は、かつて警察が極秘裏に進めていた特殊部隊設立計画に共に関わっていたある男と、不意の再会をする。

第11話「依存の定義」
学園内で密かに《影抜きサークル》を結成した生徒たちがいるという情報をキャッチしためぐみは、慎と拓朗を従え、その活動拠点である空き教室に踏み込む。なんと、サークルの中心人物は叶鳴だった。危険な遊びと知りつつ、どうしてもやめられないのだという。深刻な禁断症状を呈し始めた叶鳴を救うため、四六時中見守ることにする慎たちだが――。

第10話「影は薄暮に微笑う」
諒と洵、二人きりとなった神郷家。洵は諒と一緒に行きたい所があるのだが、言い出せない。そこへ不意に訪ねてきた山咲まゆりと共に、兄弟は奇異にして不可解な休日の午後を過ごすこととなる。一方、有事に備えて秘かにペルソナ使役の修行にいそしむ拓朗と、コーチを任されためぐみのもとへ、叶鳴を尾行した綾凪署の楢崎刑事が近づきつつあった。

第9話「海からの呼び声」
綾凪市への帰郷以来、諒への気まずさが日常になったまま鬱々としていた慎を、二階堂映子がドライブに誘う。それが仕事を兼ねたものであっても、小さい頃から憧れていた女性との二人きりの外出は、慎の心をいっとき晴れさせた。映子は富山湾で断続的に起きている失踪事件について独自に調べており、その述懐は、慎の意識に絵本『くじらのはね』のイメージを想起させる。

第8話「クスノキの下で」
慎たちのクラスに、山咲まゆりと名乗る転校生が現れた。大人びていて口数少なく、ミステリアスなその美少女は、守本叶鳴と面識があるようだ。しかし叶鳴は再会にどことなく気まずそうである。そんな折、学園で夜な夜な不可思議な現象が起きるようになる。人の悪戯とは思えない異様なその状況を訝った慎たちは、謎を解明するため深夜の学内パトロールを決行する。

第7話「私という他者」
黒部海岸の温泉旅館へとやってきた慎と仲間たち。茅野めぐみに誘われて一行に加わったダンス部の先輩・田坂悠美は、稀人(マレビト)に襲われたショックと後遺症から立ち直れずにいた。壊れかけた精神を抱きながら、妹のように思いやる気持ちをめぐみに伝えた悠美は、その夜、海へ身を投げようとする。虚ろなその眼に映るのは、羽根をまとった少女の姿だった。

第6話「署長が消えた日」
綾凪署へやってくるはずだった一日署長が、大雪で空港に足止めされてしまった。交通安全イベント開催のため、代役を探して奔走する署員たち。折悪く「リバース事件発生」の急報を受け、単身現場へと赴く諒。署長不在の綾凪署に、今度はなんと「誘拐事件発生」の一報が入る。そんな非常事態のさなか現れた、二人の半日署長とは――!?


第5話「強いられた結合」
拓朗の友達だったロック少年・孝司が行方不明になっていると知った慎は、その名前が諒のパソコンの中にあったリストに載っていたことを思い出す。その夜、奇妙な行動を取り始めた洵とともに海岸のライブハウス跡を訪れた慎は、ペルソナを使役する少年・瀬能壮太郎と遭遇し、そこに取り込まれた孝司のペルソナを目にする。


第4話「くじらのはね」
かつて両親の仕事場だった生家のアトリエで、思い出の品を探しあてては慎に見せる洵。日頃の愛想が良いとは言えず、どちらかといえば天邪鬼な弟のしおらしい態度に少し戸惑い気味の慎。亡き両親の最後の共著である絵本『くじらのはね』を見つけ懐かしむ二人だが、帰宅した諒と慎の兄弟喧嘩を目の当たりにした洵が、真夜中に姿を消してしまう。


第3話「マレビト」
仲間達と共に、またも不可解な猟奇事件の現場に居合わせてしまった慎。それを知った諒は、異様な剣幕で街を出るよう命じる。慎は再会以来の諒の態度に納得できず、離れて暮らす10年の間に生じてしまった溝に悩み始める。そんな慎の前に綾凪署の刑事・伊藤が現れ、一連の猟奇事件に諒が関与している可能性を示唆する。


第2話「影抜き」
凪の杜学園高等部へと転入した慎は、クラスメイトの榊葉拓朗、茅野めぐみ、守本叶鳴と出会う。学園や街の若者の間では“影抜き”と呼ばれる儀式が流行しており、好奇心旺盛な拓朗に誘われた慎は、危険だというめぐみの忠告を忘れ、ついその奇妙な儀式を試してしまう。慎の目の前に現れたものとは――


第1話「特A潜在」
北陸の新興都市・綾凪市へとやってきた神郷慎と弟の洵。それは、両親を亡くして以来10年ぶりの帰郷だった。若き警察署長である兄・諒との再会を喜ぶ暇もなく、連続発生している猟奇事件に巻き込まれてしまった慎は、生命の危機に、秘めていたペルソナ能力を発現させる。新たなるペルソナの物語が、今その幕を開けた――。